PSA検査
PSAは前立腺がんの腫瘍マーカーであり、前立腺がんを早期に発見するために健康診断や人間ドックでPSAを測定することが推奨されています。
PSAは加齢とともに上昇するため、年齢によるPSA基準値が標準化されていますが、一般的にはPSAが4.0ng/ml以上になると前立腺がんの可能性が高くなります。PSA高値を指摘された際は泌尿器科専門医の受診をおすすめいたします。 >>PSAについて詳しくはこちら
PSA値と前立腺がん発見率
年齢階層別PSA基準値
年齢 | 基準値 |
---|---|
50~64歳 | 3.0ng/mL以下 |
65~69歳 | 3.5ng/mL以下 |
70歳〜 | 4.0ng/mL以下 |
PSAが高い原因
“PSAが高い”イコール“がん”というわけではありません。前立腺肥大症や前立腺の炎症といった前立腺がん以外の要因でPSAが高くなることもあるため、泌尿器科専門医は前立腺がんの有無を的確に診断する必要があります。
尚、最終的に前立腺がんの有無を確定するためには「前立腺生検」と呼ばれる組織検査が必要となります。
PSA高値の際の精密検査
PSA高値を指摘された場合、下記の検査を行って前立腺がんの可能性について評価します。
- 前立腺超音波検査
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超音波検査で前立腺は淡く白い組織として描出されますが、前立腺がんは黒く抜けて見えることがあります。また、前立腺の大きさ(体積)を測定して前立腺肥大があるかどうかも調べることができます。
- 前立腺MRI検査
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前立腺がんの存在を診断するためにもっとも優れた画像検査がMRIです。近年、MRIの進歩に伴い、前立腺がんの有無だけでなく、がんの位置、大きさ、悪性度などまで予測することが可能となりました。
MRI画像の結果から、がんの可能性を5段階(1点: がんの可能性は極めて低い 2点: がんの可能性が低い 3点: どちらとも言えない 4点: がんの可能性が高い 5点: がんの可能性が極めて高い)で評価する「PIRADS-score (Prostate Imaging Reporting and Data Systemの頭字語) 」がヨーロッパを中心に提唱され、予後に影響を与えるようながんの可能性を客観的に評価できるようになりました。
当クリニックではPIRADS-scoreをもとに前立腺生検が必要かどうかを決定しています※
※PIRADS-scoreが3点以上の場合は前立腺生検での精密検査を行います。しかし、PIRADS-scoreが1-2点であっても前立腺がんが絶対に無いと言い切ることはできません。
その際はMRI画像だけでなく、PSA値、前立腺の大きさ、年齢、直腸診の所見など踏まえて前立腺生検を行うべきかを総合的に判断します。 - 前立腺生検
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前立腺生検は超音波で前立腺を観察しながら前立腺に生検針を刺して組織を採取します。
採取した細胞を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無について評価します。
東京八重洲クリニックでは局所麻酔で行うことができる「日帰り前立腺生検」を行っております。
PSAとは
PSAとは前立腺特異抗原(Prostate Specific Antigen)の頭文字からとった略語です。PSAは男性だけにある前立腺という生殖器官で産生されるタンパク質であり、精液の中に混じってゲル状の精液をサラサラにすることで精子の運動性を高める役割をしています。
PSA発見の歴史
PSAは1966年に“ガンマセミノプロテイン”という名前の蛋白質として同定され、1971年に日本人である原らによってその特徴が位置づけられました。
その後、1979年にWangらによってPSAが前立腺組織から抽出され、前立腺特異抗原(PSA)と名付けられました。
1980年には血液中にPSAが検出されることをPapsideroらによって初めて報告され、1986年に米国でPSAが前立腺癌に対する治療効果をモニタリングするマーカーとしてFDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)から承認されています。
前立腺がん検診におけるPSA測定の有用性が前向き試験で検討されたのは1991年になってからのことで、前立腺がんの診断マーカーとしてFDAの承認を得たのは1994年になります。以降、米国を中心にPSA検査が急激に広まり、同時に前立腺がんと診断される患者が急増しました。
この頃から日本でもPSAが前立腺がんの診断や治療効果を判定する重要なマーカーとして広く使用されるに至っています。
PSAはなぜ血液中に検出されるのか?
前立腺がんがあるとなぜ血液中のPSAが上昇するのでしょうか?がんの発生によって正常の前立腺腺管構造が破壊され、腺管内に包埋されていたPSAが腺管外に流れ込み、PSAが血管から吸収されることで血液中のPSAが上昇してくると考えられています。しかし、実際にPSAが血液中に入り込むメカニズムを明確に示した研究データは存在しません。あくまでもそのように説明した方が理解しやすいため広まった考え方です。
がん以外にPSAが上昇する原因は?
血液中のPSAは前立腺がん以外に前立腺肥大症、急性前立腺炎、排尿障害(尿閉)、射精、長時間の座位やサイクリング、尿道の操作(導尿、膀胱鏡検査など)、直腸診などでも一過性に上昇することがあります。
一方、前立腺肥大症に対する治療薬である5α還元酵素阻害剤(デュタステリド:アボルブ®)や男性型脱毛症(AGA)に対する治療薬(フィナステリド:プロペシア®)などを内服しているとPSAが低下しますので、これらの薬を内服している場合にはPSA値を2倍した値を本来の値と考えて判断する必要があります。
PSA F/T比
PSAは前立腺から作られますが、その中にはFree-PSA(遊離型PSA)と呼ばれるタンパクに結合していないタイプがあります。このFree-PSAがPSA全体(Total PSA:総PSA)にどれくらいの割合で含まれているか算出したものがPSA F/T比です。
一般的に前立腺がん細胞の中にはFree-PSAが少なく、良性の前立腺細胞にはFree-PSAが多く含まれていることが知られています。したがって、PSA F/T比が低いほど前立腺がんである可能性が高いと判断することができます。
何%以下であれば“がん”であるという明確な基準はありませんが、PSA F/T比が10%以下であれば前立腺がんの可能性が高いと判断されます。ただし、PSA F/T比の結果だけで前立腺がんの有無を確定することはできませんので注意が必要です。
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